女性スタッフの精鋭たちが生み出した! 大ヒット裏ワザレシピの数々
磯野貴理子さんがプレゼンターを務めた『裏ワザCooking』は、マシュマロを使ってプリンを作ったり、ジャムをアイスに変身させたりなど、簡単で不思議で美味しい裏ワザレシピを数々紹介する大人気コーナーでした。女子中高生を中心に爆発的な支持を得て、『カンタンレシピブック』シリーズなどの書籍や、『裏ワザレンジ容器』などの裏ワザ家庭用品も数多く商品化するほどでした。
その人気の核である「裏ワザレシピ」の元となったのは、もちろん視聴者の皆さんからの「投稿」によるものでしたが、コレもまた「安全性の確認」や「クオリティ向上」のために、スタッフたちが涙ぐましい努力で日々実験を繰り返していました。スタッフの裏ワザ実験の裏話は、以下の記事にも書いています。
『裏ワザCooking』は視聴者からのニーズが高く、毎週新しい裏ワザレシピを発表するために、コーナー専門の特別チームを作ったのでした。
メンバーは全て女性! 調理師免許も持つKさんや、お料理系の裏ワザ映像制作が得意だったMさんらを中心に、10名ほどの精鋭が集結したのです。
マンションの一室で連日繰り返された、実験・試作・撮影!
料理系の裏ワザ制作のためには「キッチン」が不可欠! しかし当時、日本テレビ内に番組のスタッフルームはありましたが、火器使用可能なキッチンなど、当然設置させてもらえませんでした。
そこで、先のKさんが所属するリサーチ会社の代表Nさんが、なんと都内にキッチン付きのマンションの一室を借り、そこを裏ワザCookingチーム専用の研究室として提供してくれたのでした。
当時は本当に贅沢に番組作りが出来る時代・環境だったこともありますが、だからと言って、1つのコーナーのために部屋を借りるというのは前代未聞! それを英断したNさんも勇敢な女性社長さんでしたが、その心意気に応えようと、Kさんらスタッフたちが奮い立ったのは言うまでもありません!
こうして恵まれた環境で始まった『裏ワザCooking』でしたが、いざスタートすると苦労の連続でした。…と言うと、まるで僕も参加していたみたいですが、そこは一致団結した女性たちの「城」! たま〜に陣中見舞いで顔は出しても早々に退散し、とにかく完全にお任せしていました。
裏ワザ撮影の難しさを痛感した『バナナ事件』!
このブログを書くにあたり、裏ワザCookingチームのディレクターをしていたTさんに話を聞き、当時のエピソードを教えてもらいました。
彼女は、サッカー好きのいつもニコニコ笑顔が絶えない、とっても仕事が丁寧なディレクターなのですが、そんな彼女が今でも忘れられない思い出…「バナナ事件」があるそうです。
ある時Tさんは、「裏ワザ・バナナプリン」という、寒天やゼラチンを使わなくても、バナナと牛乳だけで固まる裏ワザプリンを撮影することになりました。通常、撮影がいきなり行われることはなく、先にご紹介した調理師免許を持つKさんたち「開発スタッフ」が何度も実験を重ねて完成した裏ワザを、Tさんたち「撮影スタッフ」がベストショットを撮るために、これまた何度もテストを行ってから撮影、という手順を踏んでいました。ネタの開発から撮影まで3ヶ月以上かかることもざらでした。
Tさんはこの裏ワザの方法をしっかり把握して何度かテストをし、本当に見事に固まる様子に感心していたそうです。途中までは…。
ところが何回目かのテストで「あれ?固まらない!?」今まで一度も失敗のなかった裏ワザが突然うまくいかなくなってしまったのです。
こうなると大変です! 固まらない原因は何なのか? 冷蔵庫で冷やす時間、容器の形状、バナナや牛乳の分量などなど…、もう一度全ての検証をやり直さなければなりません。
実は番組ではこのような「検証の積み重ね」はよくありました。同じTさんの例で言えば、「マヨネーズを使うと発酵させなくてもパン生地が作れる裏ワザ」の時は、どのマヨネーズでも同じ効果があるのか? メーカーが違ったり、カロリーオフのマヨネーズでも裏ワザが有効か? などを、何度も検証し直していたのです。(そのせいでTさんは、毎日マヨネーズ入りのパンを食べて体重が増えてしまったそうですw)
で、話は戻って…。
テストのたびにプリンが固まらない現象が続き、すっかり落ち込んでいたTさんでしたが、何度も何度も試しているうちに、ついに裏ワザ成功の「鍵」を突き止めたのでした! それは…
実は、ゼラチンがなくても固まる理由は、バナナに含まれるペクチンという成分が、牛乳のタンパク質と結びつくからで、熟していないバナナは、このペクチンがうまく働かない場合があることが分かったそうなんです。そこで、買ってきたバナナですぐテストするのをやめ、茶色い斑点が出るまで待ってから試してみると…なんと大成功! 見事に固まったのだそうです。
こうして無事に本番の撮影をすることができ、放送でも大好評となった「裏ワザ・バナナプリン」。Tさんもホッと胸を撫で下ろしたのでした。もちろん放送内やその後発売した書籍などにも、「シュガースポット(斑点)のあるバナナでないとうまくいかないことがある」という一文が、補足として掲載されました。
裏ワザはもちろん素晴らしいものですが、この補足の内容は、Tさんのようなスタッフたちが実際に沢山の研究や失敗から得た貴重な情報、汗の結晶だと思います。『伊東家の食卓』が人気を博した背景には、こういった目に見えない丁寧な作業が、視聴者の皆さんに「安心感」として伝わっていたからではないかと思います。なんか自画自賛風になっちゃいましたが、そんな素敵な番組とチームに関われて、とても幸せだったと思います。
Tさん、お話聞かせてくれてありがとう。これからも頑張ってね〜!
裏ワザ倶楽部代表・雨宮秀彦
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